拠点におけるミッションとは
ロンドン駐在員事務所のミッションは主に2つあります。一つ目は、日本マーケットの海外プロモーション、すなわち、海外投資家のお金を日本マーケットに呼び込むこと。海外からの投資を呼び込むために、日本マーケットにおける上場企業の取組みや、売買制度、マーケットの現況、システム構成などを丁寧に説明し、理解をしてもらうことが重要となります。二つ目は、現地調査を通じて、取引所ビジネスや関連規制に関する機微を捉えることです。ビジネスや規制の潮流はまさに日進月歩。規制をひとつとっても、その内容は幅広く、表層的な部分だけでは分かりづらいこともあり、関係者へのヒアリングが欠かせません。生の声を聞くことで、意外な側面や実情が理解でき、それが日本マーケットへの重要な示唆になることも少なくありません。現地関係者とのネットワークを構築して、現地でしか得られない情報を入手し、適切に日本へフィードバックしていくことも重要な仕事のひとつです。
英国から見た日本市場の位置づけ
「JPXは我々にとって話を聞いてくれる世界で唯一の取引所だ」。ある海外投資家に言われた言葉です。JPXは、間違いなくアジア地域を代表する取引所との認識はあるものの、それを理解するためには、言語や時差など様々なハードルがあることも事実です。特に欧州においては、長期視点で日本企業を評価する投資家が多数いますので、上場制度や上場企業の取組みに対して高い関心が寄せられています。取引所という中立的な立場から、上場企業に対する我々の働きかけを説明し、日本マーケットへの理解を促すとともに、彼らのニーズを汲み取り、それを制度運用につなげていくことが重要です。そのような意識での対話を続けていくことが、海外投資家にとって安心して売買できるマーケットの提供につながるのだと考えています。
海外から見てJPXに求められているもの、
また、提供すべき価値とは
ハード面では、安定したマーケット運営(システムの安定的稼働)をすることだと思います。海外投資家には、売買の成立する時間や、株価を始めとするマーケット情報を早く入手して次の売買を行いたいという方が多くいます。一方で、取引所は、社会的インフラであり、止めてはならないというミッションクリティカルな面もあります。すなわち、高速性と安定性の相反するふたつの要素を実現し、利便性の高い金融インフラを構築すること、それがハード面で求められていることだと思います。また、ソフト面では、海外投資家に対して制度やシステム構成への理解を促す姿勢があげられます。コーポレートガバナンス・コードの策定・施行などからもわかるように、日本企業の収益性向上やコーポレートガバナンスの強化を求める海外投資家の声はますます大きくなってきています。上場企業と投資家の相互理解を促進するための、橋渡し的役割もJPXが提供するべき価値の一つだと考えています。
今後の目標について
世界はダイナミックに変化し続けており、直面する課題やニーズは多様化し、これまでの取組み、考え方では通用しなくなってきました。また、取引所の運営及びビジネスには、非常に広範な見識、知識が必要となります。今後、日本マーケットが世界に提供できる価値は何かということを常に考え、企業やブローカー、投資家を始めとする関係者の方々と一緒にマーケットを発展させていくことで、ひとつ上の価値や貢献をJPXとして提供していきたいと考えています。